お母さん・お父さんのこころの安心のために

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本当に大きな地震でしたから、先の見通しが立たず目の前の生活に精一杯という状況が続いています。子どものこころのケアが必要だとしても、今は余裕がないと感じられるのも自然なことです。
 こころのケアと言っても絵を描くことやカウンセリングなど特別なことをする必要はありません。子どもの体を守ること、健康を守ることが、こころの健康を守るためにも役立っています。子どもと一緒にご飯を食べることや子どもの隣で寝てあげることなど、お母さん・お父さんが今やっている精一杯のことが子どものこころのケアに役立っています。

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親としての責任は大きいですね。誰かのためにという思いは、厳しい状況を乗り越えるエネルギー源にもなりますが、長く続けることはできません。しばらくすると、体やこころが疲れて、イライラしたり、急に涙が出たり、体やこころが動かなくなったりします。
 子どもたちはお母さん・お父さんが笑顔でもがんばっていても、本当はどんなに苦しい思いをしているか分かっています。お母さん・お父さんが感じていることを、分かりやすい言葉で伝えると、子どもは安心します。子どもに聞かせられないほどの弱音や、ぐちは、信頼できる大人にきいてもらいましょう。

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避難所などでは、助け合いがたくさんあったと思います。自宅に帰ってみると、現実の厳しさが目の前にあり、やるべきことがたくさんあります。お隣も困っているだろうから迷惑をかけられないように感じるでしょう。
 今は、大勢の人からの支援を得るのは難しいので、少しでも支えてくれる人がいたら、その支えを大切にしましょう。最初の危機状態がおさまってくると、お互いに支える地域の力が戻ってくることと思います。それまでの間、行政や病院など地元でも機能している公的な支援や、遠くにある電話相談を利用するのも良いことです。

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保護者の方の苦労に気付いてくださったことが何よりの支えです。「大変ですね。よくやっていらっしゃいますね」と一言、伝えてくださったら、さらに心強い支えになることでしょう。逆に「これ以上がんばれない」という方には、「これまでよくやってこられましたね」とねぎらい、少し休んでも良いことを伝えてみてください。

子どもの安心のためにできること

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大きな災害を体験した人の自然な反応です。特に、4月14日の前震も16日の本震も夜に発生したので、夜が怖い、寝るのが怖いと、大人も感じています。
 「大丈夫」という言葉だけでは、なかなか安心できないでしょう。まずは、「そうだね。怖いね。寝られないね」と子どもの言葉を繰り返して答えてください。体に触れてあげると、少し落ち着ける可能性があります。抱っこするとか、背中をさすってあげるとか、手をつなぐとか、子どもの年齢に合わせたスキンシップをしてみましょう。

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今までできたことができなくなった状態を、よく「赤ちゃん返り」と言います。もう一つ、エネルギー切れという説明もできます。最初のがんばりが続かなくなった状態です。これは大人にも現れる状態です。
 赤ちゃんの世話だと親が何でもしてあげないといけないので大変ですが、エネルギー切れだと考えると体とこころのエネルギーを補給してあげれば良いので、少し楽ではないかと思います。年齢に合わせたスキンシップや言葉かけ、温かい飲み物などによっても、体とこころのエネルギーが補給されます。エネルギーが補給されると、自分でできていたことは自分でやれるように戻ります。

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子どもも大人も、大きな災害のあと、体やこころのエネルギーが高まって一種の興奮状態になり、何も影響を受けていないよう見えます。けれども、本当は不安や心配などを感じているのに無理をしているのかもしれません。
 しばらくすると、急に元気がなくなったり、イライラしたりする時期が来ることがあります。災害から時間がずれて変化が現れるので、まわりから見ても理解できませんし、自分でも理由が分かりません。
 「今までとってもがんばったから、体とこころが一休みして、エネルギーを取り戻しているんだよ」というようなことを分かりやすく伝えてください。

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他に心配や不安なことがあると勉強に集中できないのは当然だと、お母さん・お父さんもよく分かっていらっしゃると思います。それでも、子どものためを思うと勉強のことが心配でしょう。
 今は「勉強しなさい」と言わずに、不安や心配を受け止めてあげてください。家族の手伝いや地域のボランティアを優先させる子どもがいたら、その気持ちを大切にしてあげてください。家族や地域の状態が落ち着いてきたら学習に戻れるでしょう。

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お友だちと早く会いたい、学校が楽しみという子どもの声がニュースで流れていました。しかし、みんな同じではありません。
 特に、4月に入園や入学したばかりの子どもは、ふつうでも慣れるまでに時間がかかります。お母さんにしがみついたり泣いたりして別れたがらない時期です。少し慣れ始めたかなという時期の地震でした。入園や入学の直後の気持ちに戻って、温かくお見送りをしてみてください。
 お友だちと会いたい気持ちの一方、家族のことを心配する子どももいるかもしれません。登園登校するお子さんに「お父さんお母さんは今日はどこで何をしているよ、何時にはおうちに帰るから会えるよ」などと伝えてみてください。

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道路事情が変わって交通量が増えたところや、地盤の状態が変わって危険なところなどがあるでしょう。大人の目が届きにくくなったところもあるでしょう。ここがいつもと違うから気をつけてと子どもに伝えましょう。
 地域の皆さんも、いつも以上に気をつけて子どもたちを見守ってあげてください。ちょっとでも気になる時は声をかけてあげてください。地域の人たちに見守られていると感じられることは、子どものこころのケアにとても役立ちます。

子どもの心のケア ー 電話相談窓口のご紹介

こども相談室では、東京臨床心理士会に属する臨床心理士が相談にのっています。 子ども自身からの相談、及び、子育てをしているご家族からの相談をお受けします。

「震災後の子どもの心のケア」の相談もお受けしています。 子育てをしていて、こんなことはありませんか?

  • ※今の子育て環境が不安でたまらない。
  • ※子どものちょっとしたことでイライラするようになった。
  • ※被災地から避難してきたが近くの相談機関を知りたい。

…など。

震災後の子どもの心のケアに関するご相談を臨床心理士がお受けいたします。

相談電話番号:03-3868-3626

相談日:火、水、金、土、日(月、木を除く毎日)

相談時間:午前10時~12時、午後1時~4時

電話相談は無料です。(通話料金はかかります。) 尚、上記時間帯であっても、相談中の場合や、研修等により相談に応じられないことがありますこと、ご了承ください。

現地の先生からのコメント

「よかよか。だいじょうぶばい」。熊本地震で子どもとともに不安のなかにおられる、お母さん・お父さんにむけてのメッセージです。子どものこころのケアが必要ですよね。でもご自分は大丈夫ですか。自分に「よかよか」と言ってあげられていますか。このサイトは、子育てをしている方々への「だいじょうぶですよ」のメッセージです。読みたいと思ったところを読んでみてください。不安なこころはよくわかります。でも「よかよか、だいじょうぶばい」。ここにこころのケアのヒントがたくさんあります。

立野 泰博先生

日本福音ルーテル大江・宇土教会牧師、九州学院非常勤講師、臨床宗教師 東日本大震災での支援の経験をいかして、宗教宗派を問わず、教会を支援物資の集積場とし、さらに4月17日には誰もが集える「震災ほっとカフェ」を立ち上げました。ママさん赤ちゃん応援プロジェクト、カフェデモンク益城の開設など、様々なつながりを通した支援プロジェクトを熊本で展開しています。