Relay Interview リレー対談 国際協力の基本は受益者を支え、エンパワーすること。しかし、遠く離れた、社会経済環境も違う世界での支えは。日本の人々にはなかなか実感がわかない。身近なスポーツの世界から「支える」姿を伝えて啓発できるかもしれない。スポーツ対談を通して、当団体も生かし生かされる国際協力も見つめ直せるかもしれない。スポーツをするプレイヤーを支える人々に商店を当てた対談により、支えることの大切さとスポーツの力・価値を浮き彫りにする。

第4回 中村 大祐さん

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GUEST

日本放送協会(NHK) スポーツニュース部記者

中村 大祐さん

平成18年にNHK入局。奈良放送局の後、福岡放送局を経て、平成25年の夏に政治部に異動し、厚生労働省や防衛省などを担当。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて一昨年夏からスポーツニュース部に。高校・大学とラグビー部に所属し、ポジションはバックス。

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INTERVIEWER

チャイルド・ファンド・ジャパン事務局長

武田 勝彦

中学時代のベトナム難民との出会いが転機となり、国際支援の道を目指す。金融機関での勤務経験や英国大学院留学を経て、いくつかの国際NGOにて、世界各地での開発支援事業や緊急復興支援事業の運営管理、事業部長や事務局長を歴任。2017年4月より現職。

今回は、以前取材でご協力いただいた、中村大祐様をお迎えしての対談です。早稲田大学ラグビー部で選手としてご活躍の後、現在はNHKのスポーツニュース部記者としてラグビーワールドカップ2019と東京2020オリンピック・パラリンピックを担当されています。

姉から勧められたラグビー

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武田)ラグビーを始めたきっかけは何ですか。

中村)中学ではバスケ部と読書同好会に入っていましたが、高校に入ると、ラグビーをしていた姉からラグビーを強く勧められました。あまり乗り気ではありませんでしたが、当時好きだったロックバンドのコンサートビデオをもらうという交換条件のもと、ラグビー部に入部しました。私の高校ではラグビー未経験者の入部が多く、初心者同士で互いに支え合えたのはよかったです。その後、早稲田大学に進学し、高校時代からの友人とともにラグビー部に練習を見に行き、私は仮入部しましたが、友人が仮入部せずに帰ってしまい、一人で耐えられるか不安な毎日でした。幸い、高校の先輩がラグビー部にいて励ましてくれたので新人練習に耐え、正式に入部しました。

武田)名門ラグビー部での練習と試合で、大学生活は大変な経験をされたのではないですか。

中村)在学中はラグビーと学業に明け暮れました。私は理工学部でしたが、毎熊輝記教授(当時)のもとで耐震診断の研究をしたのが面白かったです。簡単で安価な耐震診断なのですが、普及しないのが課題でした。その普及ということは、いまの記者の仕事にもつながっていたかもしれません。

武田)ラグビーをしていてよかった点はなんですか。

中村)ラグビーでは身体がぶつかり合って、さらにいい仲間に巡り合えました。高校・大学という人格形成の大事な時期に感情をむき出しにすることができたのは実によかったと思います。社会人になってから、仕事をするなかで感情をむき出して人に接することがないのはこのお陰かもしれません。

ラグビーをプレーしなくなってからの役割

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武田)いまはラグビーをしていますか。

中村)大学の時に怪我をしてしまった影響もあり、いまはやっていません。記者という仕事柄、急に取材現場に行くこともあります。プレーで怪我をするわけにいきませんからね。家のテレビで試合を観戦して楽しんでいます。

武田)スポーツ部局に移られて、ラグビーワールドカップと東京オリンピック・パラリンピックを迎えますが、どんなお気持ちですか。

中村)社会人になって最大のチャンスと思っています。楽しい反面、責任感も感じています。ここでしっかり放送しないと、ラグビーのよさを広めることはできないと思っています。

ラグビーを外へつなげる

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武田)試合だけを放送するのではなく、試合にいたるストーリーや情報は興味深いです。御社のウェッブサイトとアプリで配信されている「ラグビーの気になる話」が気になっています。

中村)あの企画は、ラグビーを身近なものにしたくて私が提案しました。記者だけでなくディレクターにも、さらに他のスポーツ経験をもつ記者にも書いてもらっています。また、発信の機会を増やすこと、特にウェッブの発信を増やして、放送と連動させることがラグビーの普及につながると思っています。ラグビーのもつ、今の社会との親和性や共通点を模索しています。

武田)親和性とは具体的にはどういうものですか。

中村)例えば、ラグビーのスタジアムはインスタ映えするとか、意外と選手にイケメンがいるとか、カフェ好きな選手が多いとかです。

武田)我々がタグラグビーを活用しているのも国際協力との接点です。ラグビーの5つの価値がライフスキルの10項目と親和性があるからです。「規律」などの普遍的な価値は普及力や訴求力があります。

中村)私も、チャイルド・ファンド パス・イット・バックに共感して取材をしたいと思うのは、このラグビーの価値というところです。ラグビーを通して、誰か一人でも救えたら、アジア諸国や紛争地域で苦しんでいる人たちに少しでも何かできれば、こんなに嬉しいことはありません。そんなものを探していましたし、これからも探していきたいです。

ラグビーと多様性

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武田)チャイルド・ファンド パス・イット・バックは、ラグビーの価値のほかにも、多様性も大事にしています。

中村)ラグビーは多様性があるスポーツです。視覚障がい者や車椅子の人であってもラグビーはできます。外国籍の選手を積極的にチームに入れているのもラグビーです。ラグビーはいま社会に求められている多様性にアプローチできる競技ではないでしょうか。そこをよりフォーカスしてきたいです。

武田)この対談の趣旨も国際協力とラグビーやスポーツの垣根を超えるために、「支える」という共通点にフォーカスを置いています。ラグビーをしていた中村さんが視聴者との接点を探して伝えようとしていることがとても嬉しいです。

中村)先日、日本ブラインドラグビー協会が立ち上がりました。目が不自由な人がコンタクトスポーツをするのは衝撃的でした。これは障がい者にはできないだろうというスポーツの常識を破る取り組みと思えます。障がい者だからラグビーはできないということではなく、ラグビーは障がいを乗り越えることができるものだと感じました。障がい者の可能性を広げるためにラグビーが役立っている、すごくいいことだと思います。こういうラグビーのすばらしさをもっと出して伝えていきたいと思います。

武田)私も先日、日本聴覚障がい者ラグビーフットボール連盟の方々にお会いする機会がありました。耳で聞くことができなくても、目と心で聴くことができればラグビーをすることができると仰っていたのは感動的でした。ラグビーの魅力がここに感じられます。厳しい環境にある人々にラグビーが役立つことがあればと願う中村さんのこれからの発信に期待しています。


(対談後の所感) ラグビーの価値は普遍性があると改めて感じました。それを伝えることは難しいですが、工夫して発信する努力を続けることを中村さんは教えてくださいました。より多くの人に伝えるためには共通言語でリーチしないと。ラグビーのルールでは前にボールをつなげませんが、想いやストーリーを外につなげると共感できる人は増えることでしょう。