Relay Interview リレー対談 国際協力の基本は受益者を支え、エンパワーすること。しかし、遠く離れた、社会経済環境も違う世界での支えは。日本の人々にはなかなか実感がわかない。身近なスポーツの世界から「支える」姿を伝えて啓発できるかもしれない。スポーツ対談を通して、当団体も生かし生かされる国際協力も見つめ直せるかもしれない。スポーツをするプレイヤーを支える人々に商店を当てた対談により、支えることの大切さとスポーツの力・価値を浮き彫りにする。

第2回 大久保 尚哉さん

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GUEST

サントリーサンゴリアス

大久保 尚哉さん

出身:神奈川県 川崎市
1995年 成城学園高等学校 卒業
1999年 筑波大学 体育専門学群 卒業
1999年 サントリー株式会社 入社(現役の10年間は、スーパー及び量販店への酒の営業)
2009年 ラグビー部引退(10年所属)
2009年~13年 サントリービア&スピリッツ株式会社 東京第2支社(業務店への酒の営業/社名は当時のもの)
2013年~現在 サントリーホールディングス株式会社
       コーポレートサステナビリティ推進本部 CSR推進部 課長
       サントリーサンゴリアス 運営統括マネージャー

*ラグビー経歴
小学校5年生(11歳)でラグビーを始め、32歳までプレー。(21年間)
1999年~2009年 サントリーラグビー部 サンゴリアス所属(10年間)

・代表歴
高校日本代表・U23日本代表・7人制日本代表・日本代表(6cap)

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INTERVIEWER

チャイルド・ファンド・ジャパン事務局長

武田 勝彦

中学時代のベトナム難民との出会いが転機となり、国際支援の道を目指す。金融機関での勤務経験や英国大学院留学を経て、いくつかの国際NGOにて、世界各地での開発支援事業や緊急復興支援事業の運営管理、事業部長や事務局長を歴任。2017年4月より現職。

今回は、寄付付き自販機でご協力いただいているサントリービバレッジ様との関係もあり、大久保尚哉様をお迎えしての対談です。サントリー・サンゴリアス選手として活躍された後、このラグビー部事務局のスタッフとして戻ってきて、ラグビー部と企業価値を支えています。

いつもラグビーに導かれる

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武田)いろいろなスポーツに興味をもたれていたようですが、なぜラグビーをするようになり、続けてきたのでしょうか。

大久保)小さいころから体を動かすことが好きで、野球やバレーボールなどに興味がありました。小学校にラグビー部があったので、ラグビーを始めました。途中で辞めるのがくやしくて、中学でも高校でもラグビーを続けました。高校の時に監督のお陰で本気でやる気になりました。その後、とても尊敬できるコーチに出会い、そのコーチの母校である筑波大学に進みました。卒業後はサントリーに入社しました。

会社では仕事とラグビー部の両立

武田)企業のラグビー部を想像できない人も多いと思います。ラグビーの練習だけではなく、他の社員と同じに仕事もこなさないといけないのでしょうか。

大久保)ジャパンラグビートップリーグ(通称トップリーグ)になるまでは、17:30まで仕事、このグランド(サントリーホールディングス府中スポーツセンター)に集合して19:00~21:00に練習という日々です。公式戦が近づくと、少し早めに仕事を切りあげるようになります。両立が難しいように思えますが、私にとっては仕事にメリハリがつき、とてもよかったです。

ラグビー部を支える立場になってみると

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武田)選手を引退して10年程経ちますが、どうされていましたか。

大久保)5年間は営業に専念していました。その後、いまの部署に異動し、大学生選手の採用と次世代育成をしていました。頻繁に各大学をまわり、学生や監督にコンタクトしていきました。有望な学生は各大学にいますが、我々のチームのその時の状況を考えて選んでいきます。そして、とても大事な点が人間性の高い学生を選ぶことです。

武田)人間性を見極めるのは難しいと思いますが、どうやって判断するんですか。

大久保)話をしているとわかるんです。自分の意見を自分の言葉で語れるか、相手の目を見て話すかで人間性が見えてきます。

武田)選手ではなく、選手をサポートする立場でサンゴリアスに戻ってきてどうでしたか。

大久保)実は私が引退後にチームに大きな変化がありました。それまでは監督が変わるとチームの文化やプレースタイルも変わっていました。しかし、エディー・ジョーンズ監督 になり、このチーム自体がどんなチームを目指すかを考えるようになり、「アタッキングラグビー」をするチームとなりました。Respect、Pride、Never Give Upという3つの精神的な柱もできました。これによってチームの雰囲気が変わったのですが、これまでのやり方に馴染んでいた私には戸惑いがありました。でも、自分のマインドを変えて、チームの変化に適用するようにしました。

武田)現在の役割はどのようなことをされていますか。

大久保)運営グループ統括としてラグビー部と本社との調整、地域(府中市と港区)との渉外を行っています。サンゴリアスには2つの「カチ」があります。「勝ち(Victory)」と「価値(Value)」です。常に勝つ、優勝する強いチームであることが求められています。さらに、もし勝てない時があっても、サンゴリアスが魅力あるチームであることも求められています。この2つのカチができるように日々サンゴリアスをサポートしています。

タグラグビーをビジネスに

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武田)我々はアジアの途上国でタグラグビーによる青少年育成プログラムをしていますが、日本の子どもも学校でタグラグビーに触れ合う機会が出てきています。御社でもタグラグビーの普及をされているのでしょうか。

大久保)「サントリーカップ 全国小学生タグラグビー選手権大会」のスポンサーをしています。さらに、弊社はラグビーをビジネスに役立てようとしていて、新入社員研修にタグラグビーを取り入れています。男女問わず、一日タグラグビーでチームワークを知ってもらいます。さらに、取引会社とのチームワーク向上にタグラグビーを導入したりしています。まだその成果を可視化できていませんが、サントリーが提供できる他社にはできない付加価値になればよいと思います。

ラグビーの価値はこれ!

武田)ラグビーには5つの価値があり、そこが我々の支援事業との接点になっています。大久保さんにとって、スポーツの価値とは何だと思いますか。

大久保)「人」に尽きます。人との出会い、人とのつながり、人間性の骨幹です。成長させてもらいました。これはラグビーをやった人にしかわからないでしょうが、試合で本気でぶつかると終わってスッキリするんです。本気でやるから、チームメイトも相手チームの選手も尊敬できるようになるんですよ。


(所感) 対談が終わってみて、私自身ラグビーをしたことがありませんが、大久保さんのお話から、本気でぶつかった後は本当の尊敬や結束が生まれるように感じることができたのは不思議です。