子どもの学びを支える 授業の質改善プロジェクト
新型コロナウイルス、経済危機が奪ったスリランカの子どもの教育
2020年春から世界的に猛威をふるった新型コロナウイルス。スリランカにおいても影響は大きく、学校は休校を余儀なくされ、再開したあとも保護者が感染を心配して子どもを学校に通わせないなど、子どもたちの教育に多大な影響を及ぼしました。
さらに、2022年春。新型コロナウイルスによる外国人観光客の激減などから、スリランカは外貨不足に陥り、国が経済破綻(債務不履行)してしまいました。物価は大幅に上昇し、食料品の価格が2倍になるなど、国民の生活は極めて大きな影響を受けました。
燃料の不足も深刻となり、政府は、通学に使われる燃料を節約するために学校を休校にし、さらには教科書が1人1冊配布されずに、2、3人で1冊の教科書を一緒に使わざるをえない事態にもなりました。経済危機は子どもたちの教育の機会も奪ってしまいました。

チャイルド・ファンドが支援する地域では、事態はより深刻なものでした。もともとの貧しさに加えて経済危機が追い打ちをかけ、子どもたちの食、教育が脅かされることとなったのです。チャイルド・ファンドは実態を調査し、以下のような子どもたちへの影響が明らかになっています。

地方と都市との教育の格差
こうした緊急事態が起こる以前から、チャイルド・ファンドの支援する地方部では、都市部と比較して様々な格差がありました。その一つが教育です。
例えば、スリランカの11年生が受ける全国試験の数学において、全国平均では76%が合格している一方、支援地域であるモナラーガラ県内の農村地域では50%にとどまっています。また、中学高校では、各学年の20%が毎年中退(ドロップアウト)してしまっています。

とりわけ国語や数学の学力保障は極めて重要ですが、一方的な指導や10年生で急に上がる授業の難易度などが壁となり、進級できない子どもたちや、勉強への意欲を失い、家計を助けるために中退してしまう子どもたちがいるのが現状です。加えて、新型コロナウイルスや国の経済危機で、学力の急激な低下も起こりました。
低い教育の質と教員研修の不足

こうした状況の解決には、授業や教員の質向上が不可欠ですが、地方部では専門の教員が不足しており、理科の先生が数学を教えている実態もあります。
また、「クオリティ・サークル」と呼ばれる、先生たちが互いの知識を共有しあう学びの場があるものの、研修も行われず上手く機能していません。現場の先生からも「研修の機会が不足している」との声があがっています。
数学・国語の力を伸ばす!授業の質改善プロジェクト

チャイルド・ファンドは、これまでにも子どもたちの学力向上の支援を行ってきており、特にモナラーガラ県においては、州の教育省と連携して補助教材を作成したことで、学力が大きく向上しました。
こうした経験や、これまでの教育省との連携を活かしながら、チャイルド・ファンドは新たに「子どもの学びを支える授業の質改善プロジェクト」を立ち上げます。本プロジェクトでは、先生たちの自発的、持続的な自己研鑽が行われるよう、先生の集まりである「クオリティ・サークル」の活性化を通して、授業の質を改善し、子どもたちの学びを支えていきます。
具体的には、以下のような活動をクオリティ・サークルの場を活用しながら行っていく予定です。
- 算数・数学や国語の補助教材について、活用方法を学ぶワークショップ
- 子どもを中心とした参加型の授業づくりの研修
- 「クオリティ・サークル」の活用法や運営方法の研修 など
こうした支援を通して、先生たちの能力開発をし、授業の質を改善するとともに、自己研鑽の場の大切さを認識できるようにしていきます。また、最終的には、国際的に高い評価を受けている日本の授業改善手法「授業研究」※の導入も目指します。
※先生たちが一つの授業を観察して、内容について議論することで、授業・教員の質改善をはかる手法。日本では一般的に行われており、近年開発途上国などでも導入が進んでいる。
皆さま、本プロジェクトをご支援いただき、
子どもたちの学びを支えてくださいますよう、お願いいたします。
*チャイルド・ファンド・ジャパンは「認定NPO法人」として認定されており、寄付金控除が可能です。
子どもの学びを支える授業の質改善プロジェクト
事業概要 | 先生の集まりであるクオリティ・サークルの場を活用して、授業・教育の質改善のための研修などを行い、子どもたちの学力を保障するとともに、中退などを防ぎ、学校を無事に卒業して社会に羽ばたいていくことができるようにする。 |
支援対象 | スリランカ モナラーガラ県の15校の公立小・中学校の教員、校長、教育委員会 |
協力団体 | 州の教育省などと連携して実施 |