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政府開発援助(ODA)における子どもへの暴力の撲滅についての調査



チャイルド・ファンド・アライアンスは、他の子ども支援NGO3団体、国連機関とともに、子どもへの暴力撤廃に向けられる政府開発援助(ODA)について、初めての実態調査を行い、その結果を”Counting Pennies”(子どもへの暴力撤廃予算は緊縮予算)という報告書にまとめました。この調査では、2015年の世界全体のODA予算のうち、子どもへの暴力撤廃のために支出されたのはわずか0.6%未満にすぎなかったことが明らかになっています。

こちらから報告書(英語版)が、こちらから要約版(英語)がダウンロードできます。ぜひご覧ください。

政府開発援助(ODA)と子どもへの暴力の撲滅についての調査が行われたのは初めてのことです。 “Counting Pennies”によれば、2015年のODA支出額は1,740億ドルであり、そのうち子どもへの暴力の撲滅するために支出されたのはわずか0.6%未満にすぎませんでした。これは、被援助国の子ども1人あたりでみると、0.65ドル未満という額になります。

毎年、世界中で、10億人以上の子どもたちが暴力の被害を受けています。暴力は子どもたちの尊厳、権利、可能性、そして時には人生をも奪います。暴力には、身体的暴力、性的暴力、搾取、人身売買、危険な児童労働、強制的な結婚といった多くの形態があります。子どもへの暴力が社会にもたらすコストは年間7兆ドルにのぼります。調査に参加した子どもへの暴力撤廃担当の国連事務総長特別代表マルタ・サントス・パイス氏は「子どもへの暴力がなくならないかぎり、子どもの生存、健康、教育への投資が失われ、人的資本や社会資本への弊害は看過できるものではありません」と語っています。

子どもへの暴力撤廃は、今では世界的な開発の優先事項です。持続可能な開発目標(SDGs)の採択に伴い、各国の政府は、すべての子どもたちが暴力と搾取から解放される世界を2030年までに目指すという目標を掲げています。

子どもへの暴力の人的および経済的コストの大きさにもかかわらず、子どもへの暴力を防止し、撲滅するための支出については、ほとんど知られていませんでした。政府開発援助(ODA)においても、この問題への支出の規模をはかるための体系的な努力はされてきませんでした。ジェンダーの平等や新生児の健康などの他の問題とは対照的に、子どもへの暴力に関連した支出を追跡し、記録するための、国際的に合意された方法はありませんでした。

チャイルド・ファンドは、関係団体と協力し、ODAを通じて年間どれくらいの額が子どもへの暴力を終わらせるために投資されたのかを推測しました。調査報告書を、ぜひご覧ください。

報告書(英語)
報告書の要約版(英語)
インフォグラフィック(英語)


フィリピンのオスカーのストーリー

「僕の夢は勉強をやり遂げることです。それが家族を本当に助けることができる方法です。」
オスカー、12歳、フィリピン


子どもへの暴力をなくすために政府開発援助(ODA)に何ができるのか、フィリピンのオスカーのストーリーをご紹介します。3年前まで、サトウキビ農場で働くことはオスカーの宿命でした。彼はサトウキビ産業での児童労働が慣行的に行われているフィリピンの地域に住んでいます。オスカーの兄もサトウキビの植え付けをしていましたし、オスカーも手伝っていました。そして彼は、成長したらフルタイムでやることになるのだろうと信じていました。

フィリピンの法律では、15歳未満の児童労働を明確に禁じてします。それにもかかわらず、およそ550万人の子どもたちが働いており、そのうち約300万人が危険な労働に就いていると推計されています。彼らのおよそ65%は、サトウキビ農場や加工工場を含む農業に従事しており、危険・有害な状況で働いている可能性があります。

米国のODAをもとに、サトウキビ農場における児童労働を減らすためのプロジェクトが開始されました。このプロジェクトは、教育と収入向上を通じて、脆弱な立場にある子どもと家族の機会を改善すること、児童労働の持続的な削減のための行政サービス等の制度を改善するという、2つの主要な戦略に基づいています。

このプロジェクトは、サトウキビが栽培され、加工される地域の9割以上をカバーしています。以前は子どもの学費の工面に苦労していた親たちも、今ではまかなうことができるようになり、子どもたちを児童労働から解放させることを約束しました。また、子どもが許容できる仕事と、搾取的な児童労働を区別することができるようになりました。児童労働を禁ずる国内法の実施は、95のバランガイで採択されました。砂糖産業内における重要なパートナーシップによって、サトウキビ生産者のための自発的な行動規範が採択されました。

今、12歳になったオスカーは、サトウキビ農場で働く代わりに学校に通っています。また、ボランティアの「小さな先生」として、学校に行っていなかったり、学年が遅れている子どもたちに家庭教師をしています。彼はまた、サトウキビ産業における児童労働を撲滅するため、プロジェクトの一部である児童労働コミュニティの教育チームにも定期的に参加しています。チームはサトウキビのコミュニティを訪問して、どのような種類の仕事なら子どもが許容できるかについての認識を深め、行動を促しています。オスカーは、兄や自分が数年前までやっていた危険な作業を、他の子どもたちが絶対にしなくてもすむようにと、活動しています。「僕の夢は勉強をやり遂げることです」と彼は言います。「それが家族を本当に助けることができる方法です」。

この分野への投資は、これまでのプロジェクトの成功をもとにしており、5年間のプロジェクトの実施後、サトウキビ産業の児童労働を86%削減することができました。政府開発援助(ODA)の投資は、世界中の子どもたちに対する暴力を防止し、正すことにより世界の子どもを救うことができます。しかし現状は、問題を終わらせるのには十分ではありません。暴力撲滅のための予算を増やせば何ができるか、想像してみてください。