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みんなで守る 子どもの権利プロジェクト

「フィリピンは依然として、子どもの人身取引、性的虐待などの発生源および目的地となっている。」
これは、2022年12月にフィリピンを訪問した、国連の特別調査員シンガテ氏の発言です。

フィリピンでの子どもへの暴力・搾取の問題は、2016年に政府とユニセフが行った調査でも明らかです。親や保護者から暴言をはかれたり、脅されたりしたことがあると答えた子どもは5人中3人。家庭、学校、地域などで暴力を経験したことがあると答えた子どもは80%にものぼります。

一方で、受けた暴力について相談したことがあるという子どもたちは10%程度にとどまり、相談できる行政機関などについて知っていると答えた子どもたちは30%にも届きません。多くの子どもたちが暴力を受けてきているにもかかわらず、そのことを一人で抱え込んでいるのです。

こうした危機的状況は、新型コロナウイルスのまん延によって、一層悪化してしまいました。収入が減ったことや行動制限によるストレスなどで、家庭内での身体的、性的暴力は急増しました。さらには、2年以上も学校での対面授業が休止され、家庭で苦しい環境にさらされた子どもたちは、学校という、安全で、相談できる先生や友だちがいる大切な場所を奪われてしまったのです。

対面授業の休止中、子どもたちは自分自身で教材を読んで学習に取り組んでいた

また、昨今大きな問題となっているのが、オンラインでの性搾取(OSEC – Online Sexual Exploitation of Children)です。
※フィリピンでは、OSEAC(Online Sexual Exploitation and Abuse of Children)を使うことが多い。

これまでにもオンライン性搾取に関する教材を配布するなど、支援を行ってきた

アメリカの行方不明・被搾取児童センターによると、フィリピンにおける子どものオンライン性搾取の報告が急増しており、2019年の42万件から2020年には130万件、2021年には310万件近くまで増加しているといいます。

こうした状況を受け、近年フィリピンでは、OSECに対処するための新しい法律が施行されるなど、制度が整いつつあります。しかし、現場で対応を行う行政職員や警察官などが十分な知識、スキルをもっていないなど、実態としては十分な対応がされているとはいえません。

チャイルド・ファンド・ジャパンは、これまで、スポンサーシップ・プログラムや「みんなで守る子どもの権利プロジェクト」を通して、暴力などからの「子どもの保護」に取り組んできました。この活動によって、例えば、暴力が激増したコロナ禍においても、支援地域ではほとんど増加がみられませんでした。

子どもの保護に関する啓発活動の様子

一方、先ほど述べたように、フィリピン全体では暴力の状況は依然として深刻で、特に、都市部において深刻です。2022年に公表された調査によると、都市部の暴力の件数は農村部を大きく上回っており、それが貧困と結びついたとき、状況はより悪化するとされています。

そこで、2023年度は、マニラ首都圏の低所得者層が多い地域において、子どもの保護の活動に取り組みます。この地域は、3割を超える子どもが日常的に暴力にさらされていると報告されている地域です。

プロジェクトでは、主に以下のような支援活動を行います。

・子どもの権利、子どもへの暴力・搾取、OSECなどについて学ぶことのできる研修を行う。研修を通して、教員、地方自治体、警察、保護者はもちろん、子どもたち自身も、こうした問題や子どもがもつ権利について理解することができるようにする。
・子ども主体のグループや現地の市民団体の能力強化を行い、啓発・アドボカシー活動(政策提言活動)を行うことができるようにする。

このように、子どもたちや保護者などの知識を強化するだけでなく、現地の子どもグループや市民団体の力を高めることで、子どものへの暴力が広く認知され、子どもを守る迅速な対応が取れる体制づくりを目指します。

スポンサーシップ・プログラムの支援地域でも、子どもグループが主体的に啓発イベントを企画するなど、力を高めてきている。

プロジェクトが取り組む子どもへの暴力は、それ自体、身体的、精神的苦痛を与える悪質な行為ですが、それだけではありません。暴力を受けた結果、学校に行けなくなってしまった、他者との交流を避けるようになってしまった、自尊心が低いまま成長してしまうなど、様々な悪影響を及ぼします。暴力・搾取は、子どもの未来を閉ざす、長期的な弊害をもたらすのです。

プロジェクトをご支援いただき、子どもたちを暴力から守り、子どもたちの未来を支えてくださいますよう、お願いいたします。

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*チャイルド・ファンド・ジャパンは「認定NPO法人」として認定されており、寄付金控除が可能です。

みんなで守る 子どもの権利プロジェクト

事業概要 子どもを中心に、保護者や地域住民、行政など地域全体で、暴力からの子どもの保護など、子どもの権利が守られる地域をつくるプロジェクトです。研修などを通して、子どもたちや地域の人々の知識、能力を高めるとともに、持続的に活動が継続する体制をつくります。
支援対象 フィリピンの支援地域の子どもたちや地域の人々
(2023年度は、マニラ近郊の貧困地域の子どもたちや地域の人々など約3,600人)
協力団体 チャイルド・ファンド・ジャパンの支援地域の協力団体
(2023年度は、The Samahan ng Mamamayan Zone One Tondo Inc. (マニラにおいて、子どもの保護のプロジェクトを実施してきた現地NGO))