【報告】シンポジウム「子どもに対する暴力撤廃に向けて『いまこそ行動をおこそう!』」を開催しました!
5月21日(水)、チャイルド・ファンド・ジャパンも加盟する EVAC 日本フォーラム主催により、子どもに対する暴力担当国連事務総長特別代表(SRSG-VAC)ナジャット・マーラ・ムジート氏をお招きし、シンポジウム「子どもに対する暴力撤廃に向けて『いまこそ行動をおこそう!』」を開催しました。2024 年 11 月にコロンビアで開催された「子どもに対する暴力撤廃のためのグローバル閣僚会議」(共催:SRSG-VAC やスウェーデン政府など)への日本政府のプレッジを受けて、このシンポジウムは日本における子どもに対する暴力撤廃へ行動することを目指しました。平日の対面での開催でしたが、関心のある方々など約 100 名にご参加いただくことができました。改めまして、ご参加いただいた皆さまに感謝申し上げます。
第一部、基調講演

最初に、子どもに対する暴力担当国連事務総長特別代表ナジャット・マーラ・ムジート氏に講演していただきました。深刻化する子どもに対する暴力をなくすためにあらゆるリソースを注ぐ、投資することを力説されました。
同氏は、まず世界の子どもの半数以上が何かしらの暴力を経験している等いくつかの悲惨なデータを紹介して、暴力を終わらせることをもう待ってはいられないと訴えました。次に、子どもへの暴力の影響は悲惨極まりなく、しかも長期的に続くため、暴力がとてつもないコストとなっていることを説きました。そのコストは一国の GDPの 11%になるとの試算もあります。子どもの保護とウェルビーイングに投資すると、高い投資利益があることを強調しました。そして最後に、私たちが子どもへの暴力をなくし、この負のサイクルを断ち切ることができることを主張しました。
同氏は、どの国でも、政府が一丸となって取り組むこと、子どもへの暴力についての経済的なコストを計り投資として対策を練り、市民社会なども含めたマルチステークホルダーによる取り組み、包括的な政策をとることなどを提言しました。その上で、日本の国際的な役割と、国家行動計画(NAP)見直しへの期待を述べました。
第二部、パネルディスカッション

国家行動計画(NAP)が見直しの時期にあり、市民社会がどのように政府とともに行動できるかについて、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの大野容子氏がモデレーターを務めながら、パネリスト 7 名を交えて、パネルディスカッションを行いました。
まず、こども家庭庁長官官房 参事官(総合政策担当)の中原茂仁氏より、政府での子どもへの暴力撤廃に関する取り組みについての全体像として、こども家庭庁設立・司令塔としての機能、パスファインディング国としての国際的なリーダーシップ、国内での省庁横断的取り組み(子どもに対する暴力撤廃円卓会議・WG 会議設置、マルチステークホルダーでの NAP 策定)等が説明されました。
その後、国家行動計画(NAP)の柱ごとに議論が進みました。
1)虐待・体罰
中原氏より、政府での取り組みについて説明されました。そして、チャイルド・デ ス・レビューにおける「保護者の同意」について、日本子ども虐待医学会・日本子ども虐待防止学会の山田不二子氏と中原氏とで意見交換しました。
2)性暴力
こども家庭庁成育局安全対策課 課長補佐の落合博昭氏より、政府での取り組みについて説明されました。そして、チャイルド・ファンド・ジャパンの武田勝彦より、こども家庭庁の「インターネットの利用を巡る青少年の保護の在り方に関するワーキンググループ」への評価と助言がありました。また、ECPAT/ストップ子ども買春の会の斎藤恵子氏より、(本シンポジウム開催時に)国会で審議中だった AI 法案に、生成 AI のもたらすリスクへの対策が附帯決議に追加されていることが強調されました。
3)子どもの権利の周知
再び、こども家庭庁中原氏より、政府での取り組みについて説明されました。そして、国際子どもの権利センターの甲斐田万智子氏より、子どもの自殺を憂慮して、学校における子どもの参加の権利と自殺の関係について、調査の必要性が提言されました。
4)全体
ワールド・ビジョン・ジャパンの柴田哲子氏より、日本が子どもに対する暴力撤廃パスファインディング国として、昨年 11 月にコロンビアで開催された EVAC 閣僚会議に出席し、プレッジ発表、ボゴタ行動要請賛同、パスファインディンググローバルアライアンスへの参加表明などを積極的に行ったことを評価しました。そして、市民社会や専門家、民間などによるマルチステークホルダーからのインプットを得て、2021年に省庁横断で作成した「子どもに対する暴力撲滅行動計画(NAP)」は大変意義があることをこども家庭庁中原氏とも確認しました。
このパネルディスカッション全体を聞いて、最後にナジャット・マーラ・ムジート氏は、子どもに対する暴力撲滅行動計画(NAP)の見直しが重要な機会となると強調しました。この改定が、子どもへのいかなる暴力をも予防し対応する包括的なサービスへとつながると述べました。

子どもへの暴力は被害に遭う子どもにとって甚大な損害であり、社会にとっても大きな損失です。子どもへの暴力をなくすために、力を合わせて行動に移していきましょう。